爛れた声では愛をうたえない
学の無い私は文字もわからない
手に入れた足で私に何が紡げるのか
同族を喰らうあの男に恋をした罰は
この胸の痛みなのか
瞳から出る海水なのか
心の血液と涙が無くなる前に

私は。


*
ああ、人魚姫

吐き出す声は嘘しかうたえない
書きだす文字は信号として捨てられていく
踏みしめる足さえ使わずに
温もりを感じることすら忘れた罰は
この胸の空虚なのか
光を失った瞳なのか
満たされることを忘れた心と瞳は

あなたには、理解できない。


愛しい人のために
すべてを捨てて満たした心で
愛を感じるために
愛しい人を収めたその瞳で
ただ、愛ゆえに
最後まで愛しい人を想って
泡となり海の星へ還るあなたは

なんて

わがままで

醜くて

美しいのか。


ああ、かわいそうな人魚姫
あなたはきっと
本当は幸せだったのでしょう


さあ、愛しの人魚姫
あなたが欲した
足も
学も
声さえも
得ることができたなら

もう

泡となって消えることさえ
許されない


その足で
頭で
声で
すべてで

失いながらも
どんな形でも
必ず
「伝え」なくてはならない


これが


あなたの得ることができなかった
ハッピーエンド
『理想的な結末』


今を生きる人魚姫よ
泡となって消えることのできる
「赦し」なんてもうないの

その空っぽの心を
誰とも合わないその瞳を
満たすために

「伝え」なさい



『ああ、人魚姫。君の美しい歌が聴きたいんだ。』